Audeze iSINE 20 スピーカーで音を聴くような感覚を味わえるイヤホン (その3)

AUDEZEはヘッドフォンメーカーとしては、根強い人気をもつアメリカのヘッドフォンメーカーだ。一貫して平面駆動型の技術を採用してきた。

ヘッドフォンの平面駆動の技術を小さなイヤホンに展開するのはとてもむずかしいようだ。今でも、イヤホンに平面駆動型が少ないのはそいううわけだ。

その難しい技術をイヤホンに展開したのが、iSINEシリーズだ。iSINEのラインナップは iSINE 10、と iSINE 20がある。違いは平面駆動を駆動するためのボイスコイルの配線密度の違いだ。この違いは、どれだけ細かく平面駆動版を振動させられるかということに影響するし、音の解像度と音場に影響するとのことだ。

今回、私が購入したのは、iSINE 10 の2倍のボイスコイルを実装している iSINE 20だ。よりフラットな音質で、音場も広いということで購入を選択した。

実際に手にしてみると通常のイヤホンに比べると、イヤホン本体のサイズがかなり大きい。一昔前によくあったオンイヤー型のイヤホンより少し小さいくらいのサイズだ。したがってイヤピースだけでは耳に固定するのは難しい。ネット上のレビューでは、耳あな近くのひだに引っ掛けるタイプのシリコン製のイヤフックが快適だとあったが私の場合うまく安定しない。イヤフックと別に補聴器によくあるイヤハンガーも付属しているので試してみると、こちらもうまく固定できない。音質以前にまずこの装着感が個人的には問題だ。

しかし音質は素晴らしい、今までイヤホンで体験したことのない音の定位だ。まるで、ヘッドフォンで聴いているような頭の外側前面に定位する。音源によっては、さらに前、時にはスピーカーで音を聴いているかのように感じることさえある。これはとても新鮮な感覚だ。オーケストラの音も、イヤホンでありがちな、指揮者の位置ではなく、客席3列目くらいの感覚。音源から遠く離れる感覚はつまり音場の広さにもつながる。

音の方は、うわさどおりとてもフラットな音だ。高音域は伸び、低域は締まった音がしっかり出る。ダイナミックレンジが広い感覚を味わえる。ヴァイオリンの音はつややかに感じ、コントラバスの音も一つ一つの音が弦を弾く感覚が伝わる。解像度に関しては、高価な多ドライバーのイヤホンには及ばないが、違和感なく聴くことができる。

この価格帯でこういった感覚を味わえるものは他にないように思える素晴らしい出音だ。

しかし、筆者は前述のとおりうまく耳に固定できないことが残念だ。実際に店頭で装着してみてうまくフィットするようなら、クラシックをイヤホンで聴いている方には自信を持っておすすめできる。